アパートの鍵貸します

 

 

1960年にアメリカで制作されたこの映画。

知人にオススメされて気になっていましたがやっと見ることができました。

 

Jack Lemmon演じる保険会社の平社員(バクスター)が昇進目的で自分の部屋を4人の上司にホテルやパーティー会場代わりに貸しているところから話は始まる。

そんなバクスターはエレベーターガール(フラン・キューブリック)に心惹かれていて・・・

 

基本的にネタばれはしないようにしますが、少し内容を含みます。

 

頭が回るものの自分を犠牲にしてしまうバクスターが周りに誤解されながらも目的の昇進を果たしていく。

人間として何を優先して生きるのかを考えさせる作品です。

 

Jack Lemmonや部長役のFred MacMurrayの演技が素晴らしい。

Jack Lemmonを初めて観たのは酒とバラの日々が初めてでした。このような喜劇俳優だとは知らずにいた自分が恥ずかしいです。頭はキレるけれど自己犠牲的で恋愛に関することとなると盲目ぎみな主人公を演じ切っています。

調べてみたらアルコール依存症だったそうですね。

 

遊んでいて地位もある部長を演じたFred MacMurray。あんな色気を出されたら駄目とわかっていても惚れてしまいますよね。

淡々と目的にむかって一番効率のよいであろう行動する様が面白い。このお話しのあとも彼は変わらず生きていく気がします。

 

そして、エレベーターガールを演じる当時25才のShirley MacLaineがとても愛らしい。袖を余らせて手を振る動作や首を前後させておどける動作ひとつひとつが印象的です。

 

 

素晴らしかったパスタを作るシーン。料理が得意というバクスターが念願のフランとの食事でさぁ食べようと言う時に邪魔が入り結局口を付けずに終わります。

同じものを一緒に食べるというシーンは心を許したことをわかりやすく示しているのにそれが中々行われない。

食事を含んだ誘いにもドタキャンされ、やっとのことこぎつけた(成り行きは本意ではないが・・・)食事さえもさせてもらえない。

全体に流れるもどかしさを更に強調する良い演出だと思いました。

 

お酒もフローズンダイキリマティーニ、ラムコリンズ、シャンパンとその役に飲ませるべきものが絶妙に配置してあってよかったです。

カウンターでオリーブを並べることで既に何杯もお酒を煽った後ということを表現していたのにはグッときました。

バクスターとフランが一緒にお酒を飲むのは紙コップに入れたシャンパン(?)をパーティー飲むくらい。しかもフランは勤務中なためあまり乗り気ではありません。

それなのにある男性と飲むときはもう注文するお酒まで男性は知っていて、既にオーダー済み。バクスターの恋が険しい道のりなのを暗に示していました。

 

ホテル代わりに部屋を貸しているという設定にも関わらず、あまり性の描写やそれを感じさせないのはお酒を用いて享楽的な印象を補っているからかとも感じました。

主人公の性格がそうだからというのもありますが、内容に反して非常に綺麗な印象を受ける映画です。

 

あと、DVDの特典でついていた当時の宣伝広告が面白かったです。

一度見た方ならわかるかと思いますが、そのシーンを広告で使っちゃうのかっていう部分を用いて作られています。

最近ベイマックスの宣伝が国によって違うということが話題になっていましたが、きっとこの笑いありアクションあり涙ありの感じが当時のアメリカで(今もかな?)受けていたのでしょう。

「There is action... every night」という謳い文句は嘘でしょ!

 

アカデミー賞ゴールデングローブ賞など総なめにしただけある素晴らしい作品でした。